乳酸菌

漬け物・ヨーグルト・キムチ・乳酸菌飲料 共通するものはなんでしょう?!

それは、乳酸菌です。ヨーグルトに乳酸菌飲料は納得ですますが、漬け物にキムチも乳酸菌なんです。

乳酸菌は、生命の維持のために有機体が行なう外界から取り入れた無機物・有機化合物を素材として行なう一連の合成と化学反応をおこして乳酸を生成する細菌類の非学術的な総称なんです。

この乳酸菌ですが、発酵食品の製造にいろいろと用いられてきました。先に述べた、ヨーグルトや乳酸飲料などの発酵乳製品、キムチや漬け物、そしてハンバーガーのお供のピクルス、ドイツウィンナーの添え物のザワークラウト※1などは発酵植物製品です。そして、琵琶湖の名産品で有名なふな寿司などのなれ寿司なども発酵食品です。乳酸菌による発酵ですが、食品に酸味を主体とした味や香りの変化を発酵することによって与えられますし、乳酸によって食品のpHが酸性側に偏ることで、腐敗や食中毒の原因になる他の微生物の繁殖を抑えて食品の長期保存を可能にしてくれます。一般的なヨーグルトの賞味期限は17日間です。

そして、嬉しい効果にビタミンCの濃度も高くなります。乳酸菌は発酵の時に、ビタミンCも生成するので、発酵前の生乳のビタミンCよりも濃度が高くなるんです。実際、牛乳にはビタミンCがほとんど含まれていませんが、なぜ含まれていないのかというと、子牛自身がビタミンCを合成することができるので牛乳から摂取する必要がないためです。牛乳を発酵して作ったヨーグルトは、少しですが少しですがビタミンCが含まれています。

植物性乳酸菌ですが、野菜や豆、米や麦などの植物素材を発酵させている乳酸菌のことを言います。漬物(キムチ、ザワークラフトも含む)や味噌、しょう油、そしてお酒になれ寿司などの米の発酵食品も、いろいろな食品に生育しています。ヨーグルトのように牛乳などの動物の乳に生育する乳酸菌は動物性乳酸菌と呼びます。動物性乳酸菌は、乾燥、熱、酸に弱く、胃酸(胃液に含まれる強い酸性の消化液)で死滅します。

今一番注目を浴びているのは、植物性乳酸菌です。植物性乳酸菌は酸に強いために、生きたまま腸に届きます。生きたまま届くということが植物性乳酸菌の特徴です。植物性乳酸菌は、腸まで届くプロバイオティクス※2食品なので、腸内生存率が動物性乳酸菌の10倍!と言われています。植物性乳酸菌の効果としては、免疫活性作用、発癌物質の排出・分解、便秘・下痢の解消、病原菌感染の予防などが挙げられています。

乳酸菌が雑菌として混入することが問題になっているのは、他の発酵食品の製造過程で混入してしまうからです。アルコールに強い乳酸菌では、ラクトバシラス属のL. fructivorans、L. hilgardii、L. paracasei、L. rhamnosusなどがありますが、酒類の醸造、発酵中に混入して増殖してしまうと、異臭・酸味を生じさせてしまい、お酒の商品価値を失わせてしまいます。

日本酒醸造の現場では、これらのことを「火落ち」または「腐造」と呼んでいます。これらの菌は「火落ち菌」※3として造り酒屋たちから恐れられています。火落ちにより混入した乳酸菌によって醸造後に腐敗することを防止するための手段があります。この手法は長年の経験から編み出されたもので、行なわれています。この手法は「火入れ」と呼ばれています。「火入れ」※4は低温殺菌法で、醸造した酒を65℃の温度で23秒間加熱すればこれらの菌を殺菌できます。

ワインでも日本酒と同じようなことが起こります。ワインを保存中に乳酸菌発酵によって異臭や酸味を生じることがあります。その原因を追究しようとルイ・パスツールの研究によって、食物が腐敗するメカニズムが解明されました。そして、パスチャライゼーションと呼ばれる低温殺菌法(パストリゼーション)の発明へとつながっていきました。

パスチャライゼーション(Pasteurization)は、食品などの加熱殺菌法のうちで、摂氏100度以下の温度で行う方法のことをいいます。1866年に前述のルイ・パスツール※6(近代細菌学の開祖)とクロード・ベルナールによって、ワインの殺菌法として最初に導入されたことからパスツールの名をとって命名されました。L. lactisは、ナイシンとよばれる抗菌ペプチド(バクテリオシン)を生産します。ナイシンは、黄色ブドウ球菌やリステリア菌などの食品腐敗菌に対して高い抗菌活性を持ちます。その抗菌作用を期待して食品添加物として世界中で広く用いられています。

※1 サワークラウト(Sauerkraut)
ドイツのキャベツの漬物で、「すっぱいキャベツ」です。一説には、ドイツのキャベツは「石頭」の同義語として「キャベツ頭」という言葉があるくらい硬いので、このような食べ方が考案されたともいわれています。
※2 プロバイオティクス(Probiotics)
人体に良い影響を与える微生物のことです。人間は体内の微生物のバランスを崩すと病気になるという概念から、まず大事なことは体内環境を整えること。乳酸菌に代表される善玉菌を食品から摂取することで、消化器系のバランスを改善し、病気の発生を未然に抑えることができるとされています。この考えは、アンティバイオティクス(抗生物質)の副作用や、抗生物質によって生まれた耐性菌の発生に対する批判から生まれたものです。
※3 「火落ち菌」
1906年に東京帝国大学の高橋偵造によって火落ち菌についての研究は開始されました。そして、ふつうの細菌用培地には育たないのに、日本酒を入れると生育する菌がいることを発見したため真性火落菌と命名されました。これは、日本酒の中だけに菌の生育に必須の成分が存在することを示しています。それから、多くの微生物学者や醸造学者たちによって更なる研究がされましたが、なかなかはかどりませんでした。研究開始から50年後の1956年に、微生物定量法を採用した東京大学の田村学造教授(微生物学者)によって、この成分がメバロン酸であることが発見されました。日本では当初火落酸と命名されましたが、後に「火落ち菌」と改称されました。
※4 「火入れ」
日本では火落ちを防ぐ火入れを、1560年頃(パスツールの発見より300年前で、日本は永禄3年桶狭間の戦いがあった年号)に日本酒を造るうえで経験的に生み出され、「火入れ」として行われてきました。酒質を損ねないために温度帯としては比較的低めでの低温殺菌です。明治時代(1881年)に、イギリス人ロバート・ウィリアム・アトキンソン※5が来日した時に、日本各地の酒屋でこの「火入れ」の様子を観察しました。西洋のパスチャライゼーションとは違い、温度計のない環境の中で、杜氏が酒の表面に「の」の字がやっと書ける熱さとしてぴったりと華氏130度(約55℃)をピタリとあてて「火入れ」を行っていることに驚きを表明しています。
※5 ロバート・ウィリアム・アトキンソン
イギリス人の化学者です。明治時代に東京開成学校(現:開成学校)で教鞭を執っていたお雇い外国人教師です。1878年、東京化学会(現:日本化学会)の創立に貢献しています。
※6 ルイ・パスツール フランス
生化学者で細菌学者。「科学には国境はないが、科学者には祖国がある」という言葉でも知られています。ロベルト・コッホとともに、「近代細菌学の開祖」とされています。パストリゼーションだけではなく、分子の光学異性体を発見しています。またワクチンの予防接種という方法を開発し、狂犬病ワクチン、ニワトリコレラワクチンを発明しています。

乳酸菌の細菌学的な位置づけ

乳酸菌は、発酵によって糖類から多量の乳酸を産出して、悪臭の原因になるような腐敗物質をつくらないものが一般的には乳酸菌と呼ばれています。

乳酸菌ですが、大きく分けてホモ乳酸菌とヘテロ乳酸菌に分類されます。

ホモ乳酸菌は乳酸のみを最終産物として作りだし、ヘテロ乳酸菌はアルコールや酢酸など乳酸以外のものを同時に産出します。その細菌の形状から、便宜上分類されている呼び方に、球状の乳酸球菌(にゅうさんきゅうきん)と桿状の乳酸桿菌(にゅうさんかんきん)に分類されます。

一般的に乳酸菌と呼ばれ利用されることが多い代表的な細菌は6属があげられます。どれも発酵によって多量の乳酸を産出するだけではなく、比較的低いPH(水素イオン指数)条件下でよく増殖します。これらの菌にとって乳酸は発行の最終産物でもありますし、乳酸を作り出すことによって環境を酸性に変えることによって他の微生物の繁殖を抑えることができるので、自分自身の増殖に有利に働く役目もあります。

ラクトバシラス属 (Lactobacillus)
グラム陽性の桿菌でありラクトバチルスとも呼ばれています。一般的には「乳酸桿菌」と呼ぶ場合、このラクトバシラス属をさす場合が多です。種によって乳酸のみを産生(ホモ乳酸発酵)するものと、乳酸以外のものを同時に産生(ヘテロ乳酸発酵)するものがあります。L. delbrueckii、L. acidophilus、L. caseiなど。ラクトバシラス属は野外から容易に分離されるので、古くからヨーグルトの製造に用いられてきました。ヒトや動物の消化管にも多く生息しているので、、その糞や便からも分離されます。また女性の膣内に生息するデーデルライン桿菌と呼ばれる細菌群も、主にラクトバシラス属で構成されています。また、L. fructivorans、L. hilgardii、L. paracasei、L. rhamnosusなど、ラクトバシラス属の一部にはアルコールに強いものがあります。これらを日本酒醸造の現場では「火落ち菌」と呼び、この菌の混入は日本酒の異臭や酸味などの発生(火落ち)の原因になりますが、L. paracasei , L. plantarum は、ワインのマロラクティック発酵(リンゴ酸が乳酸に変わる現象)を行います。
ビフィドバクテリウム属 (Bifidobacterium)
よく耳にするビフィズス菌とも呼ばれています。これはグラム陽性の偏性嫌気性桿菌で、増殖の際にしばしばV字型、Y字型などに分岐した形態を示します。ヘテロ乳酸菌の一種で、乳酸と酢酸を産生する。B. bifidumやB. adolescentisなど。ビフィドバクテリウム属の細菌は、乳児(母乳栄養児の消化管内)に特に数が多い消化管常在菌です。乳児の頃は最も多いのですが、年を重ねることによって(加齢)他の嫌気性細菌に取って代わられてしまいます。
エンテロコッカス属 (Enterococcus)
回腸、盲腸、大腸に生息しています。グラム陽性の球菌で、ホモ乳酸発酵をします。フェカリス (E.faecalis) 、フェシウム (E.faecium) などがあります。整腸薬としてビフィドバクテリウム、ラクトバチルス、エンテロコッカスの三者を混合したものもあるほかにも、フェカリス菌FK-23株やEF-2001株 (E.faecalis EF-2001) を加熱殺菌した菌体の免疫賦活能力が高いとされる報告があげられています。
ラクトコッカス属 (Lactococcus)
牛乳や乳製品に多く見られる菌です。グラム陽性の球菌で、連鎖状または双球菌の配列をとります。そして、ホモ乳酸発酵をします。これらを原料とした発酵乳製品に用いられています。L. lactis、L. cremorisなど。
ペディオコッカス属(Pediococcus)
ピクルスなどの発酵植物製品から分離されることが多い菌です。グラム陽性の球菌で、4連球菌の配列をとり、ホモ乳酸発酵をします。P. damnosusなど。
リューコノストック属 (Leuconostoc)
ザワークラウトなどの発酵植物製品から分離される菌です。グラム陽性の球菌で、連鎖状や双球菌の配列をとり、ヘテロ乳酸発酵をします。L. mesenteroidesなど。L. mesenteroides は、ワインのマロラクティック発酵を行います。

乳酸菌は素晴らしい

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